絵が動く動く!『スチームボーイ』

[ネタばれはしておりません。安心してお読みください。]
劇場版アニメ『AKIRA』から16年。たぶん多くの人が、『AKIRA』以上のサイバーSFアニメを期待したであろう大友克洋監督の新作は、19世紀のロンドンを舞台にした蒸気機関の巨大なパワーをめぐる冒険活劇と聞いて、「なんで?」って思ったかもしれないよね。僕もそうでした。

『AKIRA』を作って以来大友さんは、描いた絵が動くというアニメーションの魅力に、すっかり取り憑かれたのでしょう。
『スチームボーイ』のすっごいところは、とにかく描いた絵が動く動く!
もちろんCGを導入した部分もあるけど、全編微塵の乱れもない統一感で描かれた動画は、力のあるクリエイターが7年もの歳月をかけただけの極上品。
やたら動くといっても、ディズニー・アニメのようにぐにゃぐにゃしているワケでなく、やたら髪の毛だけなびくアニメの2次元的常套表現を追究しているワケでもない。キャラクターが、自分の意志や無意識から自然にカラダを動かしているのを、丁寧に描いているんですよ。まさに〈アニメーション〉の語源通り、見慣れた「平面の大友キャラ」に、〈命が吹き込まれた〉かのようでした。

人物キャラとともに、独特なレトロ・メカのデザインもすごくいい。そして大友さんの才能の1つでもある、多彩なアングルと構図の力。ここまで画づくりのうまい映画はそうないですよ。スチーム城コントロールルームでの、ルーペを重ねてズーム・イン&アウトさせる見せ方なんて、アクションの少ないシーンで画面密度を作りこんでいく匠の技って感じでした。

たぶん『AKIRA』の系統を今やるとしたら、『イノセンス』のようにCG&デジタル処理のオンパレードになっちゃうのを、あえて動画の持つ魅力を発揮できる題材を選んだのでしょうね。
CGやデジタル処理をあくまで表現を実現するためのツールとして使い、アナログな職人芸的力量を発動させるのに、無骨でやたら重量感のある蒸気をエネルギーにしていた時代を舞台にするのって、なるほど納得のマッチング。

ストーリー的には、このまま宮崎さんが作っても成立しちゃいそうな、『未来少年コナン』や『天空の城ラピュタ』のような発明少年レイを主人公にした冒険活劇。
でも、大友さんが宮崎アニメ風冒険活劇アニメを作った、ってだけではないですよ。
なんでも蒸気で機械を動かしちゃう時代がかつてあった、というところから、あーんなクライマックスに持っていっちゃうのは、さすがサイバーな大友さんの持ち味でしょう!
電子チップではなく歯車と蒸気出力レバーで制御される機械の描き込みも、さすがの大友ワールド。鈍い色をした金属の質感表現も究極です。ああいう機械にわくわくしちゃうのって、子供の頃学研の「科学」の付録にわくわくしたキモチを思い出しちゃう。
あとは人物設定が特徴的。登場するほとんどの大人が、いかにもな悪人や、とことん善人という単純なキャラ設定でなく、立場によって自ら正しいと信じる行動に出ているという点も、宮崎アニメじゃないテイストになってると思う(「もののけ」のエボシはこういう系のキャラでしたが)

ヒロインでもある富豪の孫娘スカーレットの性格が、エヴァのアスカっぽいのがいいね。金を儲けることの何がいけないの?という傲慢なだけでない現実性と、無邪気な子供っぽさの同居がリアル。萌えキャラじゃないから、そっち系アニメ・ファンには肌が合わないと思うけど、やたら生き生きとしたキャラなので、後半男ばっかになる展開の中、紅一点の華をばっちり担ってました。声をあてた小西真奈美がうまいのにも驚いちゃった。
公開初日に発表になった、続編の主人公は彼女らしいです。何年後の公開になるんだろ(^^;

ところで、ロンドンの街がここまで破壊された映画って、初めてなんじゃないかな。
東京や福岡、マンハッタンのように、怪獣や天変地異が襲って来ない場所だからね。
架空の場所ではないんだけど、妙に新鮮さを感じて興味がわいてきました。
ちょうど六本木ヒルズで、「スチームボーイ 19世紀ロンドン展」という企画展を開催中で、時間があれば行ってみたい!

作り手がやりたいことを思い切りやったんだなー、という思い入れから、ちょっとエピソードを詰め込みすぎな感じもするのですが、この密度の濃さはDVDで何度も観ることを前提にすればいい案配でしょう。
登場するレトロなメカも楽しいので、それだけじっくりDVDで観たいとも思うし。

今年観た映画の中では、最高に入る出来。
子供の頃楽しみに観に行った、「東映まんがまつり」の東映動画長編漫画映画を思い出しました。カタカナのアニメというより漫画映画って言葉、ぴったりかも。

『スチームボーイ』オフィシャルサイト
スタッフによる『スチームボーイ』BLOGサイト
『スチームボーイ』の食玩:メインキャラ&メカニック
東京都現代美術館で開催中の「日本漫画映画の全貌」
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  by tzucca | 2004-07-23 02:43 | → MOVIE

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