予想に反してよく出来てた!映画版「ダ・ヴィンチ・コード」(ネタバレなし)

a0028078_1173087.jpg知的好奇心とサスペンスに満ちた原作の情報量を、2時間30分の中でどう映像化できるのだろう?
どれほどムリがあるか、を確認するかのようなキモチで、5月20日全世界同時公開された映画版「ダ・ヴィンチ・コード」を観てみたら…。これが、予想に反して原作を手際よく映像化していて、面白かった!
ただし、原作を読んでいない人が「モナ・リザの秘密を解き明かす映画」だと勘違いして観ると、そうでないことが分かる頃には重要な情報を見逃してるかもなので、映画を観る前にパンフレットを買って、「西洋史的キーワードを読み解く」のページだけでも読んでおきましょう。これは殺人事件を追うサスペンスではなく、キリスト教がこれまで隠してきたものを追っていく物語だから。八百の神様がいる日本では、一神教を信仰する世界の人が、この作品の内容にどれだけショックを受けるかなかなか分かり兼ねるんだけどね。

映画化にあたって一番心配だったのは、ストーリーの根幹となる追いつ追われつ&裏切りの連続となるのサスペンス部分と、作品のテーマとなるシオン修道会が守り続けてきたキリスト教の根底を揺るがす<秘密>に迫る謎解きと歴史の説明部分を、どう映画的に配分するか?ってこと。
サスペンス部分に重点を置くと、ハリウッド的アドベンチャー・ムービーになってしまうし、テーマの説明部分に重点を置くと、ナショナル・ジオグラフィックチャンネルの歴史番組のようになってしまう可能性があるもんね。
心配をよそに「けっこう面白い」と感じたのは、そのストーリー部分とテーマ部分をどちらも犠牲にすることなく手際よくまとめていたから。
そう、一言でいうなら<手際がいい>。すごく細かいカット割りで視覚的な情報を積み重ねていくのと、アナグラムを解いていく思考イメージを<可視化>してみせるなど、映像的表現を最大限に使って、情報密度の高い展開をちゃんと娯楽作品として仕上げてました! 現在時制でない部分やキャラクターの内面描写を、荒れた画質のフラッシュバック処理にすることで、現在時制から観客の意識が離れていかないようにしたのが、お見事。最後までテンポの良さとテンションをキープしてたもん。

ただし原作で一番ワクワクしたダ・ヴィンチの絵画に秘められたトリック、とくに「最後の晩餐」のイエスの左隣にいるのは女性という件は、TV特番のような引っ張りもなくサラッと展開してしまうので、文字からの情報と目にうつる情報とのインパクトの差を感じましたねー。つまりそれって「そういうものだと思って見てしまうと疑うべき部分に意識が向かない」という原作から得た教訓をテストされてるようなものです。ここに登場する人たちは皆頭脳が明晰で、進学クラスの授業スピードで物事を理解していっちゃうから、僕らはたとえ原作を読んでいたとしても、スクリーンをしっかり見なくてはいけません!ラングトン教授の専攻である象徴学のように、説明を加えず象徴として見せる部分や、なにげなく反復される言葉やセリフで、説明不足に感じる部分を補ったり、映画的なパズルにもなってますよ。


教会から内容や設定の変更を迫られたというニュースもあり、原作で展開した一大宗教告発部分が、どれくらい映画に反映できているかという点も、核になる部分は原作そのままでした!ただし原作では「事実」というページから始まるのに対して、映画ではエンドクレジットに「これはフィクション」とことわりを入れています。そうすることで教会からの圧力を突っぱねて、ストーリーを守ったソニー・ピクチャーズは偉かった!(実際、創作部分がほとんどですからね)
いくら大ベストセラーであっても、映画の方が小説を読んだ人よりはるかに多くの人に影響を与えちゃいますから、あくまで娯楽作品という体裁をとったことは正解ですね。真っ当な歴史探究ものにしてしまったら、マグダラのマリアの存在を大きくクローズアップさせることも、聖杯伝説の新解釈をオープンにすることも、困難だったろうから。娯楽作品であっても、抗議行動が世界各地で盛り上がってるくらいだし。抗議が加熱すればするほど、そこに真実が隠されている気がして観たくなっちゃう反作用が起きるのにねぇ…。

関連団体からの意見で変更されたものとして、色素欠乏症のコマンダー修道僧:シラスの目の色が、赤目でなく青目になっていました。ビジュアル的に特異なシラスは、映画の中で存在感がすごく際だってましたよ。

ラングトン教授のトム・ハンクスはじめ、キャスティングはけっこうぴったりでした!
ソフィー・ヌヴーを演じたオドレイ・トトゥは、はじめ影が薄く感じるんだけど、だんだんと独特なオーラを放ってくるあたり、「アメリ」のただならぬ存在感はこの人自体の魅力でもあるのだと再認識。
リー・ティービングを演じるのは、「ロード・オブ・ザ・リング」でガンダルフを演じたイアン・マッケラン。僕、このじいさんの顔の表情が大好きなんです。富豪の宗教史学者じーさんが、こんなにも魅力的なキャラクターになったのは、イアンのおかげ。



a0028078_1182061.jpgこの作品は、パリのルーブル美術館をはじめとした実在する場所で事件や謎解きが行われるので、ネットでその場所の写真を検索しながら小説を読んだものでした。くそー、ルーブルに行きてぇぇ!とものすごく思いました!
だからこの映画の一番の見どころは、舞台となった場所でのロケともいえます。原作ファンは、細かな違いを比較なんてせずに、「ダ・ヴィンチ・コード・ツアー」に出かけたつもりで、実在するその場所の映像を楽しみましょう!

全世界同時公開の直前、ワールドプレミアとなったカンヌ映画祭オープニング上映前のプレス試写では、評価がかなり低かったというニュースが大々的に流れましたよね。それってカトリック教会から送り込まれた刺客による妨害作戦だったんじゃないかなと思いましたよ(笑)カトリック教徒にしてみれば、自分が信じているものを「真実じゃない」と告発されて、面白い気はしないもんね。
プレス試写から一転してカンヌのオープニング上映では5分以上のスタンディングオベーションだったらしいよね。映画としてかなり力の入った作り方をしているので、映画が好きな人ならその仕事に拍手したい気もわかります。

(2006年5月21日 TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン7)

「ダ・ヴィンチ・コード」鳴りやまない拍手(5/19)[スポーツ報知]
映画版「ダ・ヴィンチ・コード」プレミア前に抗議広がる[CNN.co.jp]

原作を読んだ時の僕のレビュー(2004-7-4)

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■原作を読んだ人もまだの人も、予習としてナショナル・ジオグラフィックチャンネルでオンエアされた、次の2本がすごく参考になりますよ。もし録画してる友だちを見つけてぜひチェックを!
「禁断の聖書〜キリスト教の歴史を紐解く:第1部テンプル騎士団」
「ダ・ヴィンチ・コード 真実と虚構の境界線」

また、フツーの日本人をやっているとわかりにくいキリスト教についての基礎知識として、カトリック的にこれが正しい解釈とされているメル・ギブソン監督作品「パッション」を観ておくのも参考になると思います。

映画版「ダ・ヴィンチ・コード」オフィシャルサイト:ちょいと重いです。このサイト。
「ダ・ヴィンチ・コード」公式ファンサイト

すでに原作or映画をご覧になった方へ:
X51.ORG:ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」に隠された人物像を発見か
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  by tzucca | 2006-05-22 01:01 | → MOVIE

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