モーガン・スパーロックの『30デイズ』

a0028078_1482165.jpgミニシアター公開作なのに、なぜか知ってる人がすごく多い「スーパーサイズ・ミー」。
その作品で、30日間1日3食マクドナルドに挑戦して、酷い目にあったドキュメンタリー作家モーガン・スパーロックが、同様のコンセプトでTVシリーズ<モーガン・スパーロックの『30デイズ』>を制作。
アメリカでは2005年6月からFX局でオンエアされて、ドラマ以外の番組としては同局史上最高の視聴率を記録したそうで。全6回なんだけど、すでに第2シーズンの制作も決まったようです。

日本では、先月末からWOWOWでオンエア。
全6回の内容は、
1)最低賃金で30日間
2)アンチエイジングを30日間
3)イスラム修行を30日間
4)ゲイと一緒に30日間
5)自給自足で30日間
6)酒浸りで30日間

第1話の「最低賃金で30日間」だけ、モーガン・スパーロック自身のチャレンジ。「スーパーサイズ・ミー」がアカデミー・ドキュメンタリー部門受賞を逃したところから始まるのが笑える。
日本でも最低賃金での生活は相当厳しいと聞きますが、アメリカもかなり悲惨なんだよね。「スーパーサイズ〜」同様、カラダを壊しながらも、体験することで初めて実感する問題提議を、MTVのドキュメンタリー番組のようなタッチで見せてくれます。

シリーズ中で特に面白かったのは、第3話「イスラム修行を30日間」と第4話「ゲイと一緒に30日間」。WOWOWでは、2話分まとめてのオンエアだったので、この2本立ては濃かった!

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第3話「イスラム修行を30日間」
アメリカでは9.11以降、イスラム教徒=テロリスト集団と決めつけている人がほとんどのようです。
イスラム教徒は全世界で10数億人いるんですよ。アメリカの人口は3億人弱。すでに数で負けてます。
番組では、敬虔なクリスチャンの白人男性が、アメリカ国内でイスラム教徒が多く住んでいるミシガン州ディアボーンで、30日間ホームステイします。

驚いちゃったのは、その白人男さんって、キリスト教もユダヤ教もイスラム教も、元は同じ神から生まれているっていうのを知らなかったんですよ!なぜエルサレムが3つの宗教の聖地なのか、疑問に思わなかったのでしょうか。
番組のルールでは、郷に入ったら郷に従えであるにもかかわらず、その白人男さんはホームステイ先の家族とは親しくなっても、イスラムのお祈りにはなかなか参加しません。合同集会に参加しても、1人突っ立てるだけ。自分の信仰を否定したくないから、何をやっているのか何を唱えているのか理解できないから。それが理由。
中盤になって、お祈り作法と唱えている言葉の英語対訳付き解説シートを手に入れてやっとほっとしたんだけど、それでもまだやろうとしないんだもんなぁ。

う〜む。一神教というのは、そういうものなのか。八百の神がいて、いろんな宗教行事をリミックスしてイベント化しちゃう一般的な日本人とはえらい違いだ。
たぶん日本人なら、番組の趣旨を理解したうえで合同集会の場に居合わせた場合、理解していようがいまいが、見よう見まねで儀式に参加しちゃうと思うのね。
そういう国民性だから「ウルルン滞在記」が成立するんだろうなあ。

自分を変えることが恐怖みたいなんです、その白人男さん。そんな偏屈男を招き入れたホームステイ先も、正直うざったかっただろうけど、親切でバランス感覚のあるできたご夫婦なので番組が保っています。
30日も近づいてくると、さすがにその白人男さんも、イスラム教徒=テロリストなんかでなく、一般的なキリスト教徒より遙かに厳しい規律を守って生きている平和的な人たちであることを理解していきます。

イスラム教徒さんの日常生活って、僕も知らないことばかりなので、とても興味深い内容でした。でもね、逆差別になっちゃうけど、クリスチャンの白人アメリカ男って、みんなこんな頭悪い人ばかりじゃないよね?とも思っちゃう内容でした。


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第4話「ゲイと一緒に30日間」
クリスチャンで保守的、同性愛を完全否定している24歳のイケメン白人青年(またかよ)ライアン君が、サンフランシスコにある住人のほとんどが同性愛者というカストロという街で30日間生活。
この回でも、保守的クリスチャンのライアン君とルームシェアをするゲイ男性エドが、バランス感覚のあるすごくできた人間なんですよ。教養もセンスもあって、一流のビジネスマンで。このシリーズは、ホスト役の人選がすばらしい。

田舎育ちのライアン君は、都会の同性愛者ばっかりの環境の中で、いきなり自分がマイノリティの側になってしまったことに居心地の悪さを感じます。
エドは、ライアン君をゲイの社交場みたいなジムや、レストラン、バーに連れ回すんだけど、あまりにも視野の狭い田舎者なことに、ちょいとうんざり。それでも逆ギレせずに、フレンドリーに接するエドは偉いよ、ほんと。

ライアン君が同性愛を受け入れられないのは、聖書で認めていないから。ということで、ゲイタウンにある教会の女性牧師の元を何度か訪れるんです。
聖書にある「女と寝るように男と寝るのは憎むべきことだ」(レビ記18章22節)という一節。自由の国アメリカでは人はみな平等のはずという2つの価値観。
アメリカ大統領選の焦点にもなった同性婚問題も、これが問題の焦点。
牧師は言います。「聖書で同性愛を認めてあれば、あなたは認めるの?」「聖書には"殺すなかれ"と書いてある。でも軍では銃を?(ライアン君は軍に入っていた)"殺すなかれ"に関しては抜け道があるようだけど、"同性愛は罪"に関しては抜け道はないのかしら。」
聖書の解釈では最後まで納得のいかないライアン君ですが、エドに対しては拒否反応はないばかりか、ベストフレンドになっていきます。
終盤、娘からゲイであると告白された親の話を聞きに行きます。
「お前はなぜ自分がゲイだと分かる?」「お父さんはなぜ自分が異性愛者だと分かったの?」
理論でなく娘を愛する親の純粋なキモチに、今まで頑なだったものが見事に溶けちゃったライアン君。

ホームステイの間働いていた、思い切りオネェな店長のいるワインとチーズの店で得た知識を生かして、ラストはお世話になった人たちを呼んでのワイン&チーズ・パーティ。ライアン君、この30日間で劇的に変わりました。

田舎の実家に帰って、家族と再会して感じたモノローグ。

「家族の反応を見て、以前の僕を思い出した。自分が変わったのを自覚した。自分の視野が、いかに狭く偏ったものかーーまったく気づいてなかった。知らずに判断を下す前に、まず自分の目で見ることだ。」

ぱちぱちぱち。そのとーりです。
途中までは、またまた、クリスチャンの白人アメリカ男って頭悪いんじゃないの?一神教の弊害ってのもねぇって思っていたんだけど(知らずに判断下している俺)
この回はできすぎた感があるほど、1人の人間が体験によって成長していく様子を番組にしていました。

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WOWOWでのオンエアでは、ラストにモーガン・スパーロック氏による各エピソードについてのコメントがあります。第3話がシリーズ化する前のパイロットだったことと、イスラム教について公平な描き方をした番組だったことに感謝する反響が大きかったんだって。また、第4話はスパーロック氏が一番気に入っているものらしい。やはり、ライアン君の劇的な成長がよかったんだね。

でね。「ブロークバック・マウンテン」を観る前に、この第4話を観ておくといいかもよ、と思ってBLOGで紹介しました。
面白いシリーズだから、WOWOWのリピート放送か、DVDもリリースされているので、おすすめです!あ、そうそう。もし「スーパーサイズ・ミー」が未見だったら、まずそれを観てからね。

WOWOW 『スーパーサイズ・ミー』スペシャル モーガン・スパーロックの30デイズ特集ページ
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  by tzucca | 2006-04-23 03:41 | → MOVIE

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