満開の桜は怖い

a0028078_365050.jpg

満開の桜を見るのが怖かったんです。もっと若い頃は。
デーモン族の人間への無差別合体を目の当たりにしたような、うわああー!と狂気に呑み込まれてしまう感覚に陥るから…。
花が散って桜吹雪となり、枝は葉桜になるくらいになると、ようやく気を落ち着かせて桜の木を見ることができたんだ。
そんなもんで、僕にとっては、満開の桜の下を埋め尽くす宴会する人々の景色って、魑魅魍魎の異界みたいだなと思うんだよね。

けれどもその感覚は、すでに過去形。
今は満開の桜を前にしても、心のざわめきを覚えません。
まるで芥川や梶井といった神経症的文学者の如きナイーブな感性!と気に入っていたのに。

以前はもっとほんのり桜色をしていたと思っていた花びらが、全体に白く見えちゃうのはなぜだろう、なんてことを考えながら、見慣れた街のよそ行き姿みたいな桜景色を、冷静に眺めることができる自分。
歳をとって、感性が鈍ってしまったのかな。
なんとなく自覚しているのは、若い頃に恐れていた狂気なんて、現実の理不尽さや人間のリアルなダークサイドに比べたら、たいしたもんじゃないってことが分かってきたからかも。
それとも、すでにリミッターがはずれていて、いつのまにか狂気の側に足を踏み入れてしまったからなのかもしれない。免疫が作用するくらいの、軽い狂気の1つに成り下がってしまったのかもしれない……。

写真は、今日の勝どきに咲いていた桜。
意識はしてなかったけど、花が密集しているところでなく、まばらで空間のある部分ばかりを撮っているのに気がついた。やはり、まだどこかで怖いのかもな。

コミックス「蟲師 」7巻に収録されている<花惑い>は、古い桜の木についてのお話。
いつものように、しみじみとした静けさと哀しさ、美しさと愛のあるお話だった。
桜が印象的な映画がふと頭に浮かんできた。
鈴木清順の「ツィゴイネルワイゼン」。そして大島渚の「御法度」のラストシーン。
この世とあの世の境にある美しさ。「生」を断ち切るための暗示的な舞台装置。
……桜は、やはり、怖いものです。

ーーーーーーーーー

ラジオの天気予報が言っておりました。
「日曜日は雨なので、お花見は明日の土曜日に済ませておきましょう。」
済ませておきましょうって、お花見は確定申告かいっ!(笑)
[PR]

  by tzucca | 2006-04-01 03:07 | → LIFE

<< 桜の味って SUGUYA×NOCCHI フ... >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE