映画「秘密のかけら」

録画しておいた正月特番「古畑任三郎」を続けて観たのね。イチローってば役者としてもカッコええなぁ。表情がいい。複雑な展開を、笑いを交えて分かりやすく組み立てていく三谷さんの脚本もサスガです。
「古畑」の余韻が醒めぬままネットで正月映画の紹介を見ていたら、"複雑な展開と見事な構成"という言葉に目が止まったアトム・エゴヤン監督の「秘密のかけら」。映画好きの間では注目のアトム・エゴヤン監督ですが、僕はどれも未見でした。

a0028078_249144.jpg1950年代のアメリカで人気を博していたコメディアンのヴィンスとラニー。彼らがポリオ患者救済チャリティのテレビマラソン(24時間テレビみたいなもの)のあと、記者会見を開くため到着したホテルの部屋にある浴槽で発見された若い女性の全裸死体。その直後、ヴィンスとラニーはコンビを解消。まだタブロイド誌がセレブのスキャンダルを追う時代でもなく、事件はうやむやのまま闇に葬り去られた。
その15年後、テレソンでポリオが治った感謝を述べて全米の涙を誘った奇跡の少女が女性ジャーナリストに成長し、ヴィンスへ事件の真相を明かす本を出版するためのインタビューを申し込んだ。そこから明らかになっていく、ショービジネス界の闇、秘密をかかえて生きる人間の苦悩、そして事件の真相…。

映画は、ヴィンスとラニーの15年前と現在(70年代)を行き交いながら、女性ジャーナリスト・カレンの視点を加えて、さまざまなパーツを組み合わせながら展開していくんだけど、分かりにくくないんだよね。「古畑」みたいに、パーツの1つ1つが組合わさってひとつの塊になっていくにつれ、意味が深まっていく構成もおもしろかった。映画の冒頭、テレソンのオープニングに登場するヴィンスとラニーの顔が、ショーの前の緊張とは違う表情なのはどうして?からはじまって。
なぜラニーはロブスター料理がきらいなのか、彼らのホテル客室係だったモーリーンはなぜ死体となって発見されたのか…。
事件の真相は、たしかに意外なものでした。

映画の作りは多面的でとてもいいんだけど、ヴィンス=コリン・ファース、ラニー=ケビン・ベーコンの魅力がいまひとつなんだよね。15年後の彼らはいいんだ、でも全盛期の彼らが上り調子のオーラが出てなくて、「謎」に迫っていきたいと思う引力が弱いの。ヴィンスとラニーがマトモな人間すぎたのかも。いや、もうちょっと個性の強い若手役者の方がよかったんだろうな。
一番目を引いたのは、途中で出てくる「不思議の国のアリス」のコスプレをした美少女(謎)。その美少女とジャーナリスト・カレンが、ドラッグで決めて乱れるシーンが見どころになっちゃってる。その場所がハリウッドを見下ろすマルホランド・ドライブのあたりの邸宅で、雰囲気がちょっとデビッド・リンチしているのもいい。

カレンからインタビューを申し込まれたヴィンスが、「客観的な取材ではなく、取材している者がしゃしゃり出てくる」スタイルが流行っているということを言うのね。雑誌「CUT」等に掲載されるアメリカのロング・インタビュー翻訳を読むと、そういう書き方している文章ってほんと多いよね!「誰もあんたがどう思ったかなんて知りたかないのに…」と感じていたので、なるほどこの時期にそういうスタイルが確立されたのかと分かりました。
はじめはインタビュー内容をそのまま書くとフェアな態度を示していたカレンも、だんだん取材対象の世界と同化して墜ちていく様も、ストーリーの1ラインになっています。そう、この映画は何本ものストーリー・ラインが存在するので、あらすじを言葉をちゃんと書くのは難しいですね。あなたが目にする文章化されたあらすじのどれをとっても、映画をきちんと伝えているものはないと思いますよ。

アトム・エゴヤン監督の前作「アララトの聖母」を観たくなりました。


(2006年1月8日 日比谷シャンテシネ1)

「秘密のかけら」公式サイト
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  by tzucca | 2006-01-09 02:39 | → MOVIE

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