「ハリーポッター 炎のゴブレット」

映画版「ハリー・ポッター」シリーズは、これまでほぼ同時期に公開されてきた「ロード・オブ・リング」と比較して、映画としての完成度がイマイチ、原作をはしょりすぎる!
と怒るファンが確実に出るシリーズでございました。
原作をそのままのカタチで映画にはできないので、活字を映像に転化させる力業以外に、原作のエッセンスをどのように再構成させるかの料理法が大切ですよね。
得てして、原作に忠実!を唄った映画ほど原作を超えることができず不満が残り、映画独自の解釈を強調した方が、観客の満足度が高いもんです。

「ハリー・ポッター 炎のゴブレット」はね、なーんも考えずに、2時間35分楽しめましたよ。原作の世界観を映像に転化させることは、シリーズ通して成功しているとは思うんだけど、スケールの大きな見せ場の多い今作でも、活字から思い描いていた頭の中のイメージを「まさにかんな感じでしょう」とスクリーンに再現してくれました。

個人的にですけど、原作では「アズカバンの囚人」が一番好き。「炎のゴブレット」は盛りだくさんな内容なんだけど冗長に感じて、スケールはでかいし登場キャラクターは多いしで、これ映画にできるの?って思ったものでした。
原作を読んだのが随分前なので、適当に内容を忘れていたせいもあり(笑)、映画版「炎のゴブレット」は、エピソードの積み重ね方(はしょり方)とテンポがよくて、多すぎる要素の中で観客の気がハリーから逸れないように、バランスよく料理できてるじゃん!と思いました。

これまでの作品だと、「このエピソードの最後に1言こういうセリフがあれば、もっと分かりやすくなるのに…」というフラストレーションが結構あったんですよ。
今回それを感じなかったのね。映画の中で描ききれる分だけのエピソードを、バランスに随分気を遣って構成しているな、って思いましたよ。ある意味分かりやすく作りすぎなんだけど(笑)広い層に観てもらう映画だから、それでもOKっす。

前作「アズカバンの囚人」は、一部不満や突っ込みどころはあったものの、TVドラマシリーズの総集編のような忙しさから抜け出した、1本の映画として独特の空気感を持つ、キャラクターが生き生きとした青春映画になってましたよね。
それでも「炎のゴブレット」を観た後だと、制作者側は少年期のラストとなるクライマックスへつなげるための前奏として「アズカバンの囚人」を作ったのかもと思えてきたのでした。そう考えると「アズカバンの囚人」で、ダークな世界観を絵として作り出せているのに、邪悪な存在感がないという妙なバランスは意図的だった?なんて思えてきたりして。作り手に甘い発想ですけど(笑)

話を「炎のゴブレット」に戻すと、子供らが成長して演技力がついてきたから、ちょっとした表情やセリフまわしで、より多くのことを表現できるようになったのが、映画としてプラスになりましたね。
ハーマイオニーがかわいい!ってのは一貫した魅力。ハーマイオニー役以外で今後どんな女優に育っていくのか、ちょいと気がかり。イメージができあがりすぎてて。
完全無欠のヒーローじゃなく、ほとんど巻き込まれ型ヒーローのハリー。
ヒーローって自分とは違う自信に溢れた最強な存在だけど、ハリーはそうじゃない。
考えてみれば、正義のために闘うヒーローでなければ、けっこう周りにヒーローっているもんじゃない?自分だけのカリスマ。現実的なヒーロー。
だからヒーローの近くにいる普通の人間に自分を投影させやすいんだろうね。
だから、ロンがいい。前作から光ってきたロンの「等身大の少年さ」がいい感じです。

内容がてんこ盛りなので、映画の中でのバランスを考えて作ってるとさっき書いたけど、残念だったのは盛り上がりのピークを「第3課題」のサスペンスにもっとかけるべきだったかなと思えたこと。ここで観客の緊張感を一度ヘトヘトにした上で、優勝杯をキャッチした後の展開に持っていくべきだと、僕は思えたから。

原作を読んでいた時にひっかかっていたことがあるんです。それは、三大魔法学校対抗試合って、試合の経過を集まった観客が観られないじゃないですか。第一課題のドラゴンとの戦い以外は、集まった観客ははじめと終わりしか観ることができない。すべては課題をクリアしていくハリーのアクションと心の動きで展開されているんですよね。選手の行動を逐次中継してくれる大型スクリーンでもあれば違うんだろうけど、そうじゃないんだもんね。
そういう意味では、そここそ映画としてきちんと描いてあげなきゃと思うんですが、いかがでしょ。ハデなアクションはバランスを考えて短くまとめるとしても、第3課題をもっと怖くハラハラさせる展開にできるのは映画ならではのはずなのに、ちと残念。
あとダンブルドアがね、もっと超越して老いた感じを出してもらいたかったかな。でないと事件に潜む謎に思い悩む、パーフェクトな存在にも老いを感じるという部分が弱かったから。
でも残念に思えたのはそれくらい。ミニシアター系作品のような心のひだに触れるようなものを期待しているワケじゃないので、OKです。

エンドクレジットの長さから、この映画にかかわったスタッフの多さを思い知ります。そして最後の方に登場した「この映画の撮影では、一切のドラゴンを傷つけてはいません」の一文に、ニヤリ。動物が登場するハリウッド映画ではお約束のクレジットですよね(笑)

さぁ、ケーキのような映画から2006年を始めたから、いろんな味の映画を観ていきたいでございます。

(2006年1月1日 ヴァージンTOHOシネマズ六本木・スクリーン2)
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  by tzucca | 2006-01-02 18:51 | → MOVIE

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