頭で映像変換しやすかった小説「GOTH」
待ち時間対策で、小説の文庫本を探していました。
本屋の文庫本棚に並んだタイトルを目で追いながら、
どれにしようかな〜
とぼんやり考えていたのですが、
ふとそこだけピントが合った気がして手に取ったのが
「GOTH 僕の章」乙一著。
観ればカバーデザインも趣味に合っているし、
カバー裏の解説を読むと、猟奇的なミステリーらしく
なんだ僕にぴったりじゃん!
とそのままレジに向かいました。
もしかしたら、以前人から薦められてたかもしれません。
ミステリという形式で書かれたライトノベルながら、
<本格ミステリ大賞>を受賞した作品です。
面白いなぁと思ったのは、
猟奇的事件の犯人や暗黒系な主人公たちの
理由は知らないけどそうしたいから、という心理と
本当の自分を押し隠して社会の中に紛れて生きていく術
の描写が妙にリアルなところ。
だからあとがきに書かれた
「GOTH」に登場する犯人たちは、人間ではなく妖怪だと考えてください。の一言にはちょっとがっかりしちゃいました。
たしかに「現実感」を描く作品ではないのですが、
人物たちの光に向かわない性質は、真実味があると感じたんです。
殺人の理由やトラウマにあえて触れなかったことが、
物語性を押しつけるワイドショー的事件認識とは違う
ドライさがあっていいと思ったんですよ。
それに、猟奇事件が実際に多く起きている今、
それは決してダークファンタジーという安全圏でのお話ではないよなと。
僕は、小説の場合、文章を頭の中でいちいち映像変換しちゃうせいで
読むのがすごく遅いのです。
古くからの知り合いの方へ。いまだにそうなんですよ(苦笑)
「GOTH」はイメージが浮かびやすくてサクサクと読めてしまいました。
共感はしないけど、キモチは分かる、という部分が多かったからでしょう。
でもトリック部分は小説でなければ成立しないので、ここでは
触れずにおきますが、映像変換していたおかげで楽しめました。
僕は、現実でのバイオレンスには絶対反対!の人です。
しかしながら、映画でもマンガでも小説でも、
作品のモチーフとして猟奇的なものが
描かれていると、目が輝いてしまいます。
僕の中にも、無感動で暗黒に塗りつぶされた心の闇がたしかに
あります。ジェダイにゃ絶対なれねー、と思っております。
類は友を呼ぶとはいいますが、ダークサイドが見え隠れしている人に
惹かれてしまう自分がいます。親しくなりたいか?と言われると、
はてなマークですけどね(笑)
自分は●●●が好きだが、●●●が好きな人とは
あまり友達になりたくないという心理は、
矛盾しているんだけど、けっこうありがちなことじゃない?(笑)
僕が読んだ文庫版「GOTH」は、単行本「GOTH -リストカット事件」を
2分冊したものです。
「GOTH 夜の章」には、暗黒系、犬、記憶、あとがき
「GOTH 僕の章」には、リストカット事件、土、声、あとがき
という構成です。単行本とエピソードの順番が違ってます。
僕としては、「僕の章」の方が好きでした。
by tzucca | 2005-10-17 00:10 | → BOOK