母の命日に・あの事故のこと

終戦記念日の今日、さまざまなカタチで「死」と「過去」について考えるきっかけをテレビが流し続けます。

僕にとってもこの日は生涯忘れることができない日です。
約20年前のこの日、お盆で父の実家へ向かう途中、家族の乗った自動車が電車と衝突事故を起こし、母を亡くしました。JR某線を止めてしまいましたが、乗客に怪我がなかったことは幸いでした。

その事故を思い返すたび、「運命」というものを感じます。
その日のあらゆる出来事が、僕らの乗った自動車を、遮断機がなく見通しの悪いあの踏切に、あの瞬間訪れることを運命づけていたとしか思えないのです。
とても暑い日でした。僕の家族は、毎年この時期を父の実家で過ごすことになっていました。弟が運転し、父がナビゲートする自動車は、その日に限って例年とは違うルートを通っていました。あまりの渋滞で抜け道、抜け道を通っていき、ついにあの地元の人たちしか使わない踏切に来てしまったのです。

猛暑でしたから、窓を閉め切ってクーラーをかけていました。もし窓が少しでも開いていれば、目の前の踏切に警報機がなくても、遠く離れた踏切にある警報機の音が聞こえていたかもしれません。でもそれは、後になってからの話。
踏切の左側には杉並木があり、線路を確認するには踏切停止線より少し前に出なくてはなりませんでした。そこに出た時、視界のすぐ左、すぐ間近に電車が迫ってきていました。車の先端がぶつかる!と思った瞬間すごい衝撃を受け、僕は気を失ってしまいました。

救急隊に支えられて救急車まで歩いていく途中、朦朧とした意識の中で血の池となった田んぼが目に入りました。後日、それが母のものだと分かりました。
(不謹慎ながら、血の池を目にした時、「人間ってこんなに血がたくさん詰まってるのかー」って思ったのをしっかり覚えています)

病院に運ばれた時、家族の中で僕が一番の軽傷でした。弟は脾臓が破裂、父は骨折と片目を失っていました。弟が回復し父の転院が決まりかけた頃、張っていた気がゆるんだのでしょうか、僕は40度の熱が下がらなくなりました。咳が止まらなくなり、ベッドから起きられなくなりました。念のためレントゲンを撮って欲しい、と看護婦さんに話しましたが、疲労から風邪を起こしていると思われていたようです。1週間ほどしてレントゲンを撮ってもらったら、ベッドで寝ている僕に看護婦さんが駆け寄ってきました。「苦しくない?」ええ、とっても苦しいです。
体を強く打った衝撃で、肺の内側にできた傷から漏れた血が肺に溜まり、すでに肺いっぱいになっているというのです。すぐに肺から血を抜く処置がとられました。

相方であるゆいは、大学4年の夏というリクルートの時期を、東京から離れた病院近くにあるビジネスホテルに泊まって、ずっと僕ら兄弟の面倒を診るために費やしてくれました。
一緒に歳を重ねていけるパートナーがゆいで良かった。本当に。

父の実家にもう30分もすれば着くという場所でした。この事故によって、父の親戚のみなさん、事故を起こした踏切近くに住んでいらっしゃる方々、その他多くの方々が力を貸してくださいました。
翌年、その場所を訪れた時、踏切には遮断機と警報機、踏切にかかる道路も立派に整備されていました。僕ら家族が経験した不幸を、ほかの誰かに繰り返されないよう、想いがカタチになったことに、何とも言えないキモチになりました。

母を亡くして10年以上経っても、夢で母がいる生活シーンが登場すると、夢の中ではあるんだけど「生きていてくれたんだ!」という再会の喜びを感じたものです。
仕事で毎晩遅かった父は、事故後会社に復帰した後は、夜の10時には帰宅するようになりました。その父も癌でこの世を去ってから10年近く経ちました。

あの事故のことを、こんなふうにテキストにしたのは初めてかもしれません。
これまで断片的には書けましたが、まともに向き合うにはかなり時間がかかりました。日本や世界各地で起こっている大惨事で、大切な人を失った心の傷を癒すには、長い長い時間が必要なんだと思います。

僕は、父や母が望んだ息子になっているでしょうか。
たぶん違うとは思います。でも。体を壊して高校を中退しなくてはならなかった時「お前の自由にしなさい」と言ってくれた両親ですから、自由に生きている今の僕も「好きでやってるならいいさ」と思ってくれていると勝手に決めています。

早くに両親を亡くし、自分の身ひとつで戦後を生きた母。人生に余裕ができたらダンスをしたい!という夢から、晩年は社交ダンスに夢中だった母。僕、子供の頃は体が弱くて苦労ばかりかけたけど、今HIPHOPを踊ってる中年になってんだよ。あなたの息子らしいでしょ。
そして、鏡に映る自分の顔の中に、父の面影を見るようになりました。
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  by tzucca | 2005-08-15 22:03 | → LIFE

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