映画「真夜中の弥次さん喜多さん」レビュー

男2人がお伊勢さん目指して東海道を旅する話を、弥次・喜多と名乗りさえすれば、いかようにアレンジしてもOKという了解がこの国にはあるんでぇ。
しりあがり寿の「真夜中の弥次さん喜多さん」「弥次喜多 in DEEP」は、弥次さんと喜多さんがディープに愛し合うゲイのカップルで、しかも喜多さんはヤク中というトガッた設定もなんのその、イっちゃってる…完全に…、と呆然自失しちゃいそうなディープな展開。さらに「弥次喜多 in DEEP」は、第5回手塚治虫文化賞「マンガ優秀賞」を受賞しちゃった文化財でございますよ。

このマンガを映画にしようって企画自体が、激ヤバだよね。

こんなディープな世界を実写にしろ、アニメにしろ、映像化できるとしたら、誰がいる?鈴木清順じいさまじゃなかったら、やっぱクドカンこと宮藤官九郎しかないってことが、作品を観終わった後に確信しちゃいましたぜ。
原作がどれほどぶっ飛んでるとしても、クドカンが脚本だけじゃなく、初監督するとなれば、濃厚なクドカン・ワールドを誰もが期待するのを、予想を上回るテンションでやってくれちゃいました!これ、マジに傑作です。惚れ込み具合は、自分的に「ファイト・クラブ」以来のガッツポーズでLOVE!のレベル。

弥次さん喜多さんが肩寄せ合いながら暮らす江戸の喧噪は、紙みたいにうすっぺら。ゲイでヤク中という未来になんの希望も見いだせない状況に舞い込んだ、お伊勢参りのDM。モノクロ画面の中で、しりあがり寿のイラストによるそのDMだけがフルカラー。リヤルってなんだい。リヤルを感じたい。それは究極のてめえ探し。1人じゃなく、"彼"とてめぇ探しの旅ってのは、今居るここよりマシじゃねぇか?
いきなり画面がカラーになって、お江戸をあとにする弥次さん喜多さんが歌い踊ってクルージング・バイクに乗り込む。この展開は、まさにオズ大王に会いに行く旅を始めるドロシーたちが歌い踊る「オズの魔法使」。
出だしには、「四谷怪談」の名場面、戸板返しを持ってきて、いきなり爆笑のオチで掴ませてくれるし。
この映画には、クドカンの映像ボキャブラリ・フィルターを通した、いろんな作品のオマージュがてんこもり!

霊峰富士を前にした茶屋のオカマの主人(山口智充)が、歌い踊りながら客人に挨拶して、思いっきりカメラ目線になるとこなんかは、僕の人生を変えた1作「ロッキー・ホラー・ショー」のティム・カーリー登場シーンのオマージュだし。そういえば、あの霊峰富士って、RKOピクチャーズの巨大書割の役割だったのかも(^^)


"今"を生きる若者像をリアルに描くことで、注目を浴びたクドカン。
この作品は、江戸時代を舞台にしながらも、とてつもなく"今"の映画という感じ。
たんに、時代設定を無視したバイクやコギャルやカウンターバーが出てくるからってだけじゃなくって!
これって、クラブのDJミックスのように、どんなに突拍子もない展開が連なっているとしても、ノリをキープするためのBPMがちゃーんとシンクロしてるから、ドラマの総集編のような切り張り感を感じないの。このリズム感覚を、映像編集でなくエピソード構築とセリフでできちゃうところが、すげぇや!と思った。
思い切りクドカンっぽい前半の「笑の宿」から、しりあがり寿的世界のクドカン流料理が冴える「不健康ランド」から「魂の宿」での再会まで2時間4分。フロアの客のノリを観ながら、テンションを落とさず映像DJプレイする新感覚の映画監督!

状況は思いっきりリヤルじゃねーのに、出てくる役者が楽しんでハマってくれているので、当然のようなリヤルを感じて観ることができるんだよね。
特に、弥次さん演じる長瀬智也のリミッターはずれた演技には、とてつもないリヤルさを感じちゃいましたよ。涙目で「喜多さん!」と叫ぶ長瀬の顔と声に、俺のハートもビンビンだぜぃ(古っ)。
恋人同士というより、マブ友同士って感じの2人だけど、「こいつといつまでも一緒に旅を続けたい」ってキモチは、直球な純愛よりも遙かにぐっときた。スキップしようぜぇ!

喜多さん演じる中村七之助もよかったねぇ。やってることはハチャメチャでも、相当難しい役だよ、これ。一番感情移入されないといけない役の中で、絶望と寂しさと幸福の両極端をフルレンジながら繊細に演じてるんだよね。はまったら戻ってこれなくなりそうな、ディープな喜多さん。あんたは薄っぺらなんかじゃねー。そう思わせる存在。

いくらクドカン脚本のTVドラマのファンでも、この作品についていけねーってお方もいることでしょう。しりあがり寿?誰、それ?って人もね。逆に原作のディープさに惚れ込んでいる人が観たら、似ているけどテイストがちょっと違うって思うかもですが。
でも僕は、この作品を大絶賛するようなヤツで、とてつもないパワーをもらってトクしちゃったとニコニコで劇場を後にしたヤツなんでぇ(^^)
理解がどうとかいうことじゃなくって、僕が面白い!気に入った!と思うことを、スクリーンで思い切りやってくれちゃったことが、とにかく嬉しかった!

(2005年4月5日 池袋シネマサンシャイン)


映画『真夜中の弥次さん喜多さん』公式サイト
しりあがり寿オフィシャルサイト:おーい!さるやまハゲの助
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  by tzucca | 2005-04-06 00:05 | → MOVIE

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