アラン・スミシーという名の監督

映画ファンならご存じでしょう、アラン・スミシーという名の監督。
はじめての作品は、1968年の「夏の日にさよなら」。その後の代表作としては、1989年「ハートに火をつけて」、1994年「デューン・砂の惑星 特別編(TV)」、1996年「ヘルレイザー4」など。すべて、ワケありの作品たち。

アメリカ映画業界では、監督よりも、映画会社とプロデューサーの方が権力を持っています。『未来世紀ブラジル』を監督したテリー・ギリアムが、映画のエンディングをハッピーエンドに変更しろと要求する映画会社に対して<最終編集権>をめぐる戦いを挑んだことは有名で、その顛末は『バトル・オブ・ブラジル』という本にまとめられています。
結局その戦いは、監督の意図する<ディレクターズ・カット>版をゲリラ的に上映して、権威ある賞を先に獲得したギリアムの勝利に終わったけど、それは歴史に残る稀な出来事だったらしい。『華氏911』のマイケル・ムーアも同じような戦術で、作品のオクラ入りを免れたケースだよね。

もしも『バトル・オブ・ブラジル』の勝者が、監督でなく映画会社であったなら。
『未来世紀ブラジル』は、男が彼女と結ばれる夢想シーンを現実の出来事にして、そこでエンドクレジットとなってました。そして、テリー・ギリアムは「これは俺の作品じゃない!」とブチ切れて、クレジットから自分の名前を削除するでしょう。そういう事態になった場合、全米監督協会では、空白となった監督名に「アラン・スミシー」という名前をはめ込むのが習わしになっています。

ちなみに先に挙げた作品の本当の監督は、「夏の日にさよなら」がジャド・テイラー、「ハートに火をつけて」がデニス・ホッパー、「デューン・砂の惑星 特別編(TV)」はデビッド・リンチ、「ヘルレイザー4」はケヴィン・イェーガー。
決して傑作を生み出すことのない、アラン・スミシー監督作品になってしまった不幸な作品たち。

また、ここ数年DVD等でリリースされる<ディレクターズ・カット>というのは、特殊効果をデジタル技術で本来描きたかったイメージに作り直した「エクソシスト」「E.T.」の例を除けば、監督が意図した通りに撮影・編集した完成版のことで、実際公開されたのが、映画会社やプロデューサーによって再編集されたものだったケース。
ブレード・ランナー」がいい例ですね。

つまり。作品の作り手と、制作の依頼主の間には、つねにヴァーサスがあるってワケです。
映画のような大がかりなプロジェクトでなく、企業のWEBサイトを作る僕らでも、それはしょっちゅうです。とくにWEBの場合は更新があるので、納品時は僕の作品だったけど、その後の更新で「もうウチの子じゃない!」というページがけっこうあったりします(苦笑)
残念なのは、WEBの場合、ディレクターズ・カットが再登場することはないってこと。アラン・スミシーは、アラン・スミシーのままなんです。
でも、あきらめずに、アラン・スミシーにならないよう、意地をはってるワケ。

(追記)
「EZ/TV」を観ていたら、清水崇監督自らメガホンをとった「呪怨」のハリウッド・リメイク版「The Grudge」が、全米チャート2週連続第1位をとったリポートをオンエアしていた。やっぱり、監督の考えをたくさんいるプロデューサーに分かってもらうのが大変だった、とインタビューで言ってました。でも、成し遂げたのだからスゴイと思う。結果を出せたことはスゴイよ。


アラン・スミシー監督作品リスト

◆本文で紹介した本「バトル・オブ・ブラジル 『未来世紀ブラジル』ハリウッドに戦いを挑む」は、現在絶版。図書館や古本屋で見かけたら読んでみて。
[書籍DATA]著者/ジャック・マシューズ、訳/柴田 元幸、ダゲレオ出版、定価2,200円 0098-89008-4500(1989年4月10日初版発行)
→と思ったら、楽天の古書でありました!ここからどーぞ!なくならないうちに。

◆「アラン・スミシー・フィルム」は、もしもアラン・スミシーという監督が実在したら?という作品。スタローンやジャッキー・チェン、ナオミ・キャンベルという有名人が実名で登場する内幕ものですが、この作品も監督がアラン・スミシー名義なんですよね(監督はアーサー・ヒラー)
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  by tzucca | 2004-11-07 17:00 | → MOVIE

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