映画「2046」

ウォン・カーウァイが近未来SF?「2046」制作発表のニュースを目にした4年くらい前から不安と期待が入り交じり、制作中断のニュースを目にして「やっぱり完成しない映画になったか」と当然の成り行きのように思ったものです。カーウァイ・ファンのみなさん、みなそうだったんじゃない?

今年のカンヌ映画祭に出品され、ついに完成した「2046」がいよいよ日本公開。
カーウァイ映画の映像を司るクリストファー・ドイルのカメラらしい、スタイリッシュな映像で、ポスターやテレビCMの映像は、しっかりと近未来ものになっている。オーケー、彼らの才能とイマジネーションがあれば、そんなカッコいい近未来の映像を作り出すことはできるでしょう。でもそこに、どんなストーリーと人の心をカーウァイは描こうとしているんだろう?

観ると、テレビのCM映像からは想像もつかない、まぎれもないカーウァイ映画になってました。つまりは、いつもながらのカーウァイ映画です。(ハリウッド的なSF娯楽作を期待していると、ハズされますのでご注意を)
過去を忘れ去ろうと努めれば努めるほど、過去の記憶が鮮明に蘇る。「今」の時点で未来を思い描くのは、「今」の願望をゆだねること。
1960年代に生きるチャウ(トニー・レオン)が、周囲の男女をモチーフに描く近未来小説が「2046」。でも「2046」に描かれる世界の真実は、すべて1960年代の現実にある。かなわぬ恋を経験した人なら、心が共鳴してしまうところがあるはず。
そして、小説を寂しい終わり方にさせないよう悩んだ小説家がした、ちょっとした親切。それが小説家の最高の笑顔につながります。

(以下、ストーリー上のネタバレはしておりませんので、安心してお読みください。)

「HERO」で、おいしいところを持っていきすぎのトニー・レオンが、この「2046」でもすべてを持っていきます。やべーよ、またトニーのファンが増えちゃうじゃん(笑)カーウァイの日本での出世作「恋する惑星」で、世間は前半部の金城武に注目したけど、俺は後半部のトニー・レオンに目をつけてたんだぃ!(笑)

「2046」は、カーウァイの過去の作品「欲望の翼」と「花様年華」のその後にあたる物語。といっても続編ではありません。「花様年華」で、人妻スー(マギー・チャン)との実らぬ恋に失意のチャウ(トニー・レオン)が、「2046」では一時の恋しか受け入れぬ遊び人の男となって登場。この設定を他の俳優がやったら、許せんヤツ!となってしまいそうなのを、寂しげな目つきでやさしく笑顔を作る必殺技を持つトニーがやると、「この男なら…」と許せちゃいそうなのが、ズルイです(笑)
ちなみに「花様年華」でチャウとスーが逢瀬を重ねていたホテルのルームナンバーが、2046だったんです。このあたり「攻殻機動隊」のラストで、次に会う時のキーワード2501が、つづく「イノセンス」で何の説明もなく度々画面に登場して重要な意味を持っているのと似てますね。

思えば、これまでのカーウァイ作品って、ほとんどを男の立場から恋愛を描いてたように思うのね。でもこの「2046」は、女性の側に立って痛い恋の姿を描いていたと思いました。それは、フェイ・ウォン、チャン・ツィイー、コン・リー、カリーナ・ラウら豪華女優陣の、技術だけでない演技のたまものでしょう。透明な空気感を漂わせるフェイ・ウォン、強気と弱さを交錯させながら濡れ場もみせたチャン・ツィイーがとくに素晴らしい。
けれども。「花様年華」が恋愛映画のマイ・ベストである自分にとっては、主人公チャウの心に焼き付いているマギー・チャン、その艶やかさと切なさの大きさが、この映画の女優陣すべてとイコールになるくらい存在感があったことを思い知ります。だからこそ、回想シーンの中で一瞬登場するマギー・チャンに、拍手喝采!

そして、この映画の話題といえば、キムタクの映画出演。
どんな役でどれくらい画面に登場しているのか、あまり事前情報入れずに観た方がいいと思います。正直、とても良かった。目の動き、口を出る言葉の調子で、キモチがビシバシ伝わってきます。

最後に映像の話。この映画は、カーウァイ映画初のシネマスコープ・サイズ。画づくりのうまいカーウァイと、フォトグラファーの感性を映画に生かしたドイルが、この横長サイズの画面をどう料理するんだろう。これは見物です。顔を極端に端に寄せたり、壁や物影ごしに見たり、何かに遮られて画面のすべてが見えないんです。相手の心が分からず、不安定になっていくキモチを現すように。一部分隠れて見えない部分があるにしても、ほとんどは分かるんですよね…。でも分からなかった時、それを隠された部分のせいにしたい。そんな心境が行き交う仕組まれた映像。足下や手つきにも注目です。フィリピンでの湿気を感じる空気感も見事です。

(2004.10.24 品川プリンスシネマにて)

@キャストに入っているチェン・チャンは、びっくりするほど出演時間が少ないです。でもカッコいいですよ。

@ひさしぶりにお姿を拝見したコン・リーは、びっくりするほど山口百恵に似てました。彼女のエピソードをもっと長くしてくれても良かったと思うんだけど。

↓だから、近未来ラブストーリーというワケじゃ…。ミニシアター公開でないと、こういう売り方じゃないとダメなんスかね?またJAROに注意されちゃいますよ(^^;
2046公式サイト

「2046」(2004年)
監督:ウォン・カーワァイ
制作国:香港/中国/フランス/イタリア/日本合作
上映時間:130分 ドルビーSRD
配給:ブエナ・ビスタ・インターナショナル
提供:電通/フジテレビジョン/レントラックジャパン/マガジンハウス/J-WAVE/メディア・スーツ

10/29追記

TBいただいたHitomiさんのBLOGコメントで紹介されていた、ウォン・カーウァイが監督したDJシャドウのPVが超カッコいい!
http://www.djshadow.com/
にアクセスして、MEDIA PLAYERのVideoにある「Six Days」という曲です。
ラストにブルース・リーの言葉を引用して、本編もアクションを扱っているのがちょっと新鮮。


映画のあとのお食事については、ゆいのBLOGへ
[PR]

  by tzucca | 2004-10-25 01:34 | → MOVIE

<< シイクワシャーティー&シイクワ... 映画「ヨーロッパ」 >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE