濃厚カルトムービー「ホーリー・マウンテン」

とんでもない映画ですよ、マジに。神秘主義が好きで、反道徳を笑って楽しんじゃう人には、すっごいごちそう。「映画はストーリーでみる」というフツーの人は、ついていけないから手を出さない方がいいですね。
現実逃避して、ちょっとトリップしたい時には、うってつけの映画です!

80年代前半に巻きおこった、アンダーグラウンドで人気を得ていたカルト・ムービーのブーム。クローネンバーグの「ビデオドローム」あたりがきっかけだったと思うんだけど、そんなブームがなければ観られない作品が、やたらビデオでリリースされた時期があったんですよ。
そんな中、上映もされないしビデオにもならない幻のカルトムービーってのがあったわけ。アレハンドロ・ホドロフスキー監督の「エル・トポ」。ウエスタン+LSD体験と言われたこの作品、ジョン・レノン氏が熱狂のあまり版権を買い取って秘蔵しちゃったからもう人の目には触れることはない、と当時言われてました。
それが、1986年の東京国際ファンタスティック映画祭で上映、ついにビデオ発売されることに!観に行きましたよ、当然。言葉でどう感想を言っていいものか、という衝撃度&負のエネルギー。伝説化した理由がよく分かりました。

a0028078_12321573.jpgでも幻はまだ残ってました。ホドロフスキー監督の2作目「ホーリー・マウンテン」。やたら広い空間に、全裸に近いスジ筋な男が立っている1枚のスチール写真。気になります。宗教的な映画なのか?SFなのか?または幻覚世界?
その幻を解禁してくれたのも東京国際ファンタスティック映画祭。
「エル・トポ」の狂気なビジョン部分をぐわぁぁ〜とスケールアップした、期待以上のヘンな映画でした。
これって鈴木清順でいえば、「ツィゴイネルワイゼン」のあとの「陽炎座」と言えるかも(分かる人にしか分からないね)。

a0028078_1717513.jpgストーリーはあるんですよ。
キリストを思わせる風貌の半裸の男が、磔になっているところを小人に助けられる。町でイケイケなおねーちゃん軍団とすれ違い、その中の猿を抱いた女が彼に心ひかれる。大量なカエルの見せ物のあと彼は捕らえられそうになって、町中に立っている巨大な塔によじ登って逃亡。その塔の中で錬金術師と出会い、選ばれた8人の男女とともに、不老不死の世界を支配する賢者が住むという「聖なる山」への旅に出る。その道中、猿と一緒の女が、男をずっと追っていくというストーリーが。
でも、ストーリーはこの際、どーでもいいの。どーでもよくなってくるの。
バラバラなピースそれぞれのエピソードと、その映像のインパクト、世界観の濃厚さに、「すっげー」と口をぽかんとあけて、思わず笑っちゃえばいいんです!

とくに、太陽系の惑星に守護された7人の人物のエピソードが傑作。
子供を楽しませる道化が、化粧を落とすと女王的な女社長となり、世界各地で起こる戦争やクーデターを予測して、15年後なんの躊躇もなく予想敵国の人間を殺せるオトナになる刷り込み効果をしたおもちゃや日用品を開発しているとか。
古代ローマ世界を彷彿させる世界で、戦士の姿をした警察署長が、少年の睾丸をハサミで切断し、ついに1000個めの睾丸が集まったと喜び、半裸の少年らに囲まれて崇め讃えられているとか。
こんな悪の業を極めたような人間が次々と登場。比喩的な意味があるとしても、金のかかった「モンティ・パイソン」みたいに楽しめました、このあたり。

メキシコ映画史上最大の150万ドルの制作費で、こんなヤバイ内容のアンダーグラウンド・ムービーを作ったことが、後にも先にも奇跡と呼べるかも。
(制作費160億円でひたすらおバカをした「オースティン・パワーズ・ゴールドメンバー」って奇跡もありますが)
ホドロフスキー監督は、グルジェフ思想に影響された神秘主義な人で、タロットの世界でも有名なようです。たしかにこの映画には、タロットカードのシンボルが散りばめられてます。

やたら狂気じみたイマジネーションで彩られた展開が、「聖なる山」への旅にいたると、突然登山ドキュメンタリーみたいになってくるんですよ。それも笑いどころなんですが。そして物議を醸し出すラストシーン。それもアリでしょう、って思ったけど、人によっては「無責任!」「バカにするな!」と怒っちゃう人もいるようで。
そんな怒らなくてもさ、どんなに現実に目を向けて生きろって言われても、あんたたちと僕らとじゃ、絶対同じ現実じゃない、と思うからいいんじゃない?
いや、もしかしたら、同じ現実なのかな…。

「ホーリー・マウンテン」(The Holy Mountain)
1973年/アメリカ=メキシコ合作 114分


アレハンドロ・ホドロフスキー3部作 DVD
「エル・トポ」(1970年・アメリカ=メキシコ)
「ホーリー・マウンテン」(1973年・アメリカ=メキシコ)
「サンタ・サングレ 聖なる血」(1989年・イタリア)

お金のある人には、上記3部作に処女作「ファンド・アンド・リス」とインタビュー集DISKを加え、ホドロフスキー・オリジナルタロットカードがセットになったBOXもあります。昨年のリリースなので、在庫があまりないみたい。ネットで探してみると…(でもいいお値段なんだよなぁ)
アレハンドロ・ホドロフスキー DVD DE-LUXE BOX(amazon)
アレハンドロ・ホドロフスキー DVD DE-LUXE BOX(代引OK)



CINEMART:アレハンドロ・ホドロフスキーDVD DE-LUXE BOXサイト
→なにげにカッコいいサイトだ…。
┴cinemum┘:特集アレハンドロ・ホドロフスキー
シネマ・ギロテスク:ホーリーマウンテン
→DVDのインタビューにまつわるバックストーリーが面白い。ネタバレ有。
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  by tzucca | 2004-10-21 01:59 | → MOVIE

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